●プロローグ

この道中記に登場する人物・犬は、 フィクションではなくノンフィクションである(当たり前か)! 初めて犬を飼う方々に贈る、読むも涙・書くも涙ではない、 6年間に渡る、迷犬アンジーとの珍道中の記録である。

●始めの一歩

ippo2.gif 1997年の初夏だったと思う。長女が「犬を飼いたい」と言い出した。確かこのころ、ゴールデンが人気だった。友達の仔犬を見て刺激されたかもしれない。やさしい目・おぼつかない仕草。抱きたくなる。飼いたくなる。
くやしいがアイフルのコマーシャルと同じ気分だ。
 
 どうしたものか?私たち夫婦は、仕事を持っている。かといって、子供たちだけでは面倒見きれまい。それに大げさかもしれなが、子供が一人増えるぐらいの時間・精神・経済的な問題だって起こるだろう。可愛い、可愛いだけで面倒見切れるものではない。自立した知性や感情がある動物を、気に入らなかったと言って、捨てるわけにはいかないのだ。そして、犬と暮らした経験のなさが、ことさらにこの先どうして行けば良いのか不安をかき立てた。長女が投じた一石は波紋を広げていく。

次女は大賛成である。ママが口火を切った。「どうせ最初だけよ。」、「私が世話するに決まってる。」ママだって覚悟がいる。それに誰かが反対した方がイイ。娘たちも負けてはいない。必死に面倒を見る事を約束し、説得を続ける。子供たちが生き物を慈しむ気持ちはよく伝わった。やらせてみても面白いかもしれないと思った。もの言わぬ動物の喜びや悲しみが共有できれば、弱者へのいたわりにもつながるかも知れないと。そう勝手に納得し、格好よく、我家の主は動き出した。

この後、絵を描いた餅のように我々夫婦が面倒を見る事になるが...・トホホホ。

●ブリーダー

column1.jpg取り合えず本屋へ行って、立ち読みをした。『愛犬の友』が目に入った。分厚い本だ。ハウツウと云うよりも、犬に関わるあらゆる分野の人や会社・学校などが掲載してある。多くのブリーダーが載っていて、ペラペラめくるだけでも大変だ。しばらくすると、毛むくじゃらの犬が飛び込んできた。写真やテレビでみたことある・・・が、・・・・・・オールド・イングリシュ・シープドッグ? 知らない。聞いた事がない。家に帰り、インターネットでホームページを探した。引っかかった"Andy's Home"、・・・・・そうか・・・う〜・・・・ん。緑色で統一された印象的なサイトで、オールドを知るには十分であった。他にも二・三の犬種を候補に挙げたが、やはりオールドにしようと、娘たちと話し合った。

しかし、犬種が決まっても、入手先が分からない。唯一『愛犬の友』から勝沼に連絡を入れたが、先まで予約が入っていてあきらめた。大きなペットショプも近くにあったが、直接顔が見えるブリーダーにこだわった。
『ドッグワールド』、『ワンワン』から、子犬情報を調べた。名古屋(1件)、大阪(2件)と連絡を 入れたが、手に入らない。なかなかうまく行かない。
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やっとたどり着いたブリーダーが、四国に住む和住さんだった。夫妻は壇ノ浦の海辺に暮らす、ロング・スロー・ディスタンスのオーナーである。人気犬アンディを引きつれ、各地のショーで展選されていた頃だった。(今では八頭のオールドをまとめるビッグ犬舎となっている。)まもなく、アンディとナナとの仔犬をお世話頂ける事となった。(ホッ!)

和住夫妻との長い付き合いの始まりである。

●出会い

和住さんのアドバイスに従い、仔犬がつく前にあらかじめのものは最低限そろえておいた。そして屋内か屋外か、何処で飼うのかを決めておかなければならない。少なくとも、最初のしばらくは家族のそばがいいと思い、リビングにゲージを置くことにした。

1997年11月22日、高松から羽田に仔犬が降り立った。待ちに待った、運命の日である。朝からみんな落ち着かない。空港へは大勢で押し掛けると仔犬が驚くと行けないので長女と迎えに出た。ゲージから現れたのは、三か月のO.E.S。でっ・・・でかい。うっ..嘘! これ仔犬。迷犬アンジーとの出会いである。

家に着くやいなや、挨拶がわりにおしっこの洗礼。やった〜! ここは怒っちゃいけない。落ち着いて! とにかく元気である。anngieyuzu.jpg家中走り回った。可愛さに家族が和んだ。
 しかしそれもつかの間、ニ日目の夜、アンジーが初めて吠えた。太い大きな鳴声が近所に響いた。しかも仔犬とは思えない、太い大きな声である。犬と暮らすのは初めてだったから、皆たじろいだ。そんなはずじゃない。仔犬のイメージがふっ飛んだ。

●プロジェクトX

もう家族の様子をうかがってる。三ヶ月だから、しつけを初めてもいい頃だ。容貌が可愛いだけに、他人様に迷惑はかけられない。せめて一歳までは厳しく育てよう、飼い主次第だと心に決めた。
吠えてくれるな! どうした?  
アンジー噛むな。 ヤバい! 
ドッグフード食べない?  困ったな?
トイレうまく出来ないぞ! どうしよう? 
シャンプー?  たいへんだ〜!
しつけだけではない。分からない事がいっぱいある。育犬書を読むが、頭で理解できても、実践するには忍耐がいった。わが子よりも手をかけているのではないかと自問自答した。周りからもそう思われた。ブリーダー(和住さん)に相談すると、その折ごとに適切なアドバイスをあたえてくれた。四国からだって、まるで隣にいるかのように電話が来る。ペットショプで探していたら、こんな風には行かなかっただろうと、感謝した。ありがたかった。

服従訓練は徹底した。
 食事は最後。
 玄関の出入りも一番あと。
 腹を上に向け、降参のポーズを家族全員が頻繁にとらせた。
 ほめる事と叱る事をハッキリ区別させた。
 スキンシップをよくして人間の手に慣れさせた。
(この章は田口ツモロウ風に読んでいただけるとありがたい)
column2.jpg「お座り」や「待て」は芸ではない。立派な服従訓練の賜物である。「できる」と「できない」とでは大きな違いがでる。犬社会は、上下関係で結ばれいるから、"群れ"のリーダーに従う習性がある。甘やかされて育った犬は、家族の中のリーダーと錯覚し、テリトリーを侵す訪問者に対して吠えたり、噛んだりする。飼い主を引っ張って散歩する犬達もそうだが、主導権を主張して、家族の命令に従う事が「できない」のである。最下位にいて命令を聞く事が「できれ」ば、有効な関係を築く事ができ、危険回避の手段ともなり得るのである。犬と共生する重要なポイントがここにある。
 我が家ではそのかいあってか、アンジーはいまでも最下位(?)にいる。隙あらば、誰彼となくキスするが、もちろん噛んだり吠えたりはしない。人混みの中でもノーリードで歩ける迷犬なのだ。

●ビバ・ドッグライフ

どこでも注目される。
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 可愛い!ぬいぐるみみたい!
 犬種は何ですか?
 写真撮らせてもらっていいですか? 
 触ってもいいですか?
 
 老若男女、何度も同じ言葉をかけられる。人集りができる。すごい!この犬が持つviva2.jpg特殊なパワーだ。そして、なによりの醍醐味は、仏頂面を、すれ違いざま、笑顔に変えてしまう事だ。そんな光景に出会うと心の中で、ほくそ笑んでしまう。「やったな!」そう思える、アンジーとの至福の瞬間なのだ。一歳を過ぎた頃、子供たちは、散歩に行かなくなった。「み〜んなアンジー、アンジーばっか・・・ブツブツ・・・」と。娘たちが嫉妬している。

 しかし、楽しい事ばかりではない。
このフサフサとした特徴的な体毛が、風貌とは別に、我々のフトコロや部屋の景観を刺激する。ブラッシングを怠れば、いつの間にか部屋の片隅に毛玉が転がっている。遊べば、洋服は毛だらけ。何よりも、愛犬がひどい事になる。体毛がフェルト状になってしまえば、シロウトでは手がつけられない。トリミングにいけば、大型犬扱いで毛量多いから大変な金額になってしまう。これはイタイぞ! 
 マ〜、ブラッシングが出来ない飼い主は、この犬を飼う資格がない・・・・・っか。でもそれ以上に、温かいものを与えてくれるのがオールド・イングリシュ・シープドッグだと実感している。

●事件

 一歳の頃だったと思う。突然食欲がなくなった。便秘になった。どうしたんだろう? 四日も過ぎる。動物病院に連れていくが、一見して異常がない。レントゲンにも何も写らない。下剤を飲ませて運動させたが、症状は変わらない。最悪・・・・・・・・・・!  手術覚悟で入院させた。やきもきしたが、手術前日に大量のウンチが出た。皆、胸を撫で下ろした。

     一体何だったんだ?

 ひょとしたら、トイレシーツが食いちぎられていたから、お腹に入って膨らんでしまったのかもしれない。あれこれ考えたが、結局のところ、いまでも真相は謎のままだ。退屈な状態が続くと、アンジーは遊びを作る。いやあなたのお家の愛犬だって遊びを始めますよ。身の回りのもので十分。あっという間に、そして事件を起こす。部屋中をグチャグチャにされた経験はすでに何度かある。安全には、注意を払わなければならない。そう思い知らされた。飼い主の責任だ。そう反省した。
 
 看護士さん!その節はお部屋汚してごめんなさい。本当に助かりました。

●出産

 六ヶ月を過ぎた頃、不妊手術を考えた。
オスの場合は、性格が穏やかになり、扱い安くなるケースが多いと聞く。メスの場合も、発情に伴う問題や、老後の婦人病からも解放され安くなると云う。しかしメスで生まれた以上、母親にさせてやりたいと思っていた。幸い、アンジーの赤ちゃんが欲しいと言う人が現れて、年齢的に遅かったが、四歳頃ブリーダー(和住さん)に相談した。高松は遠くて少し心配したが、昼間、留守にする我々にとって、力強い答を頂いた。お産と子犬の養育もお宅でお願いすることができたのである。
 しかし、子宝に恵まれるまでには一年半の歳月が流れた。アンジーのおかげで、高松のお宅までおじゃまする事が出来た。ついでに金比羅宮参拝と本場の讃岐うどんを頬張った。海と山に囲まれた風光明媚な所を、オールドたちは毎日海岸沿いに、自分達の庭のように散歩していた。

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2003年4月7日に待望の赤ちゃんが産まれた。難産だった。時間がかかった。
メス一頭、
オス五頭。
しかし高齢出産による弊害だったのか、一頭、命を絶った。残念だった。メスが一頭だった事で多少の調整が必要だったが、オーナー探しも、kodomo.jpg順調に進だ。私が云うのもなんだが、みんな美男美女。べリべリグッド。力丸・ネネ・ボブ・シンバ・ロビンと仔犬達の名前も決まり、オーナーの元へ無事旅立った。仔犬達のための犬舎ウェイワードネスを開設した。

和住さん感謝してます。ワガママな飼い主でご免なさいね。大変だったけどいい思い出です。

●ウェイワードネス

Waywardness="ウェイワードネス" 研究社の辞書によれば、「気ままなこと」・「わがまま」とある。そのままの私である。ブリーダーを生業としているわけではない。こののちアンジーの年齢を考えれば、交配も考えられまい。肩肘を張らず、のんびりやろうとの意も込めた。このサイトの名前でもある。この犬舎が、これからどのようになっていくのか定かではないが、素直にこのサイトを通して、末永く愛犬と楽しみ、愛犬家の方々と交流できる窓口にと考えている。

●病気

 2003年11月12日。アンジーが入院した。正直行ってガックリきた。あれは11月3日のトリミングの帰りである。トリマーの福田さんから、ろっ骨のあたりに、ゴルフボールだいのしこりがある事を指摘された。福田さんとは、彼女がトリマーの学校へ行っている頃からの付き合いであるから、どれくらい経つのだろう?TARONGA(タロンガ)と云う名のニューファンと暮らしていて、そのしつけの良さに話をかけた。まだ店こそ持たないが、トリミングだけではなくトータルに助言を与えてくれるので、若いが、絶大な信頼を持っている。

 翌日、病院に駆け付けた。開腹してみないと分からず、癌の可能性を残した。まだ6歳である。もし癌であれば、転移も考えなくてはならないし、再発する恐れもある。大変な事になるなと直感した。今回は、避けられない手術である。血液検査と手術日を決めてその日は帰った。11月13日手術が1時から始まったが、思ったより早く、2時間で終わった。医師から説明を受けながら、腫瘍を見せてもらった。脂肪のかたまりで癌ではない。筋肉下のため、触ると堅く、動かず、脂肪腫とは考えにくかったそうである。医師も私もてっきり癌だと思っていた。byouki.jpg
助かった〜!
アンジーも元気だ。
良かった!
本当に良かった!
 退院の日、入院がショックだったのか、吠えないアンジーが鳴いてすがってきた。我家に来て初めてのしぐさである。つらい思いに気が付いた。アンジー!よく頑張った。えらいぞ!

 犬だって、ケガもすれば病気にもなる。当たり前の事である。でも、でもである。命には代えられないがである。保険が効かないことはどう云う事か、思いっきり知らされる出来事でもあった。

●エピローグ

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アンジーパパ: 「アンジー、机の上にあったリンゴ知らない?」
アンジー: 「・・・・・・・・・・・・。」
アンジーパパ: 「たべたろ〜? 丸ごと!」
アンジー: 「・・・・・・・・・・・・・・。」
アンジーパパ: 「聞いてる!」
アンジー: 「・・・・・・・・・・・・・・。」
これからもアンジーとの珍道中は続く。良きパートナーとして(苦笑)。 可愛がるだけではなく、それに伴った飼い主の責任がある事を。 また楽しい事ばかりではなく、大変な事だってある事も。 我家の体験を通して、つたない文章でお伝えした。 まだ色々書きたい事もあるが、少しずつやらせていただく事にする。 ただ、ただ、この文章を書く事によって、犬を飼ってみたいと考えている方々の、何がしかの道しるべになればと願っている。